違うって本当?!関東と関西のご飯配膳マナー

関東と関西ではエスカレーターの立ち位置が左右逆という話は有名ですが、和食の配膳にも違いがあると知って驚きました。ご飯を美しくおいしくいただくためにも、和食の基本マナーはしっかりおさえておきたいもの。今回はご飯やおかずの正しい配膳マナーから関東と関西でどんな違いがあるのかまで、検証してレポートします。


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関東と関西、いちばん支持されている配膳マナーは?

まずは基本的な食卓での和食配膳について調べてみました。和食の基本は、主食(ご飯)、汁物(お味噌汁やお吸い物など)、主菜(焼き魚などメインのおかず)、副菜(煮物や卵焼きなど)、副々菜(お浸しや野菜のあえものなど)からなる「一汁三菜(いちじゅうさんさい)」です。主食っておかずではなくて、ずばりご飯のことなんですね。お米は日本人、そして和食の中心なのだとあらためて実感しました。

日本の左優位の思想性からご飯は左と決まったようです

これらの配膳ですが、「①左手前に主食(ご飯)、②ご飯とは逆の右手前に汁物、③おかずはまとめて奥に置き、左から副菜・副々菜・主菜の順番で並べる」のが和食マナーの基本として正しいとされています。この和食の決まりごとは、マナー講習関係者やマナー教本などでも広く認知されており、まずはこれが一般的であると考えてよさそうです。

しかしさらに調べたところ、関西を中心に、主食のご飯の後ろ、つまり左奥に汁物を配置し、ご飯の右手前に主菜のおかずを置くという配膳を受け継いできている人も多くいることが分かりました。都道府県別に自宅ではどこにお味噌汁などの汁物を置くかのアンケート調査※をした結果を見ると、大阪府、京都府、兵庫県の3府県では「左奥にお味噌汁」と答えた割合が70%以上に!さらに関西から中国地方でも左奥に配置する人が多数派となりました。

和食配膳の基本ルール通りに、「右手前にお味噌汁」と答える人が多かったのは、東京都、埼玉県、神奈川県など。特に群馬県では85%が右手前派と圧倒的でした。(※2018年Jタウンネット調べ)

関東と関西では配膳の位置が違うという傾向は、確かにあるようですね。単なる噂ではなかったと分かりました。

「ご飯の左奥に汁物」が、関西で広がった理由は?

和食の標準マナーとされることが多い「ご飯の右手前に汁物」派と、関西圏に多い「ご飯の左奥に汁物派」。それぞれ、どうしてこのような並べ方が受け継がれてきたのでしょうか?

まず、「ご飯の右手前に汁物」を置くという基本の一汁三菜の配膳について。この配膳の位置は、諸説あるものの、武士が中心となって活躍した鎌倉から室町にかけての時代から広まったと考えられているようです。貴族文化が栄えた平安時代には、宴会での料理は皆の目の前に数多くの皿が並べられる形をとっていましたが、武家社会になるについて一人ずつお膳が用意されてそこに料理が配膳される「銘々膳」が一般的になりました。

同時に武芸が中心となり日本は「右利き」文化が根付くことになりました。生まれつきの利き手とは関係なく、右手で刀や弓矢を使うように矯正される世界では、お箸を持つ手も必ず右です。そこでご飯や副菜など頻繁に器を持ち上げる必要があるものは左に置き、メインの主菜など皿を持ち上げる必要がないものは右に置くことが定着したそうです。

はいここで、「それが理由であれば、汁物の椀は持ち上げる必要があるのに、右手前に置くのっておかしいのでは?」と思ったあなた、筆者も同感です。これには、「一番偉い主菜であるご飯をまたぐようにして椀をとるのは無作法になるから」との説があるようです。

では関西で知られている「ご飯の左奥に汁物」配置は、どうして生まれてきたのでしょう?よく言われているのが「メインである主菜を手前に置くことでボリューム感を演出できる」と考えた商人気質から出たとの解釈。食文化研究者も採用している説です。他には、「おかずが前、汁物が後ろの方が、とりやすいし、うっかり手が当たって汁物をこぼしたりしないから」という「関西は合理的説」や、「味噌はお米に次いで地位が高いので手前に配置される説があります。味噌の消費量が全国で最下位に近い関西ではお味噌汁を格上とは考えないから後ろに置いた」、「地域による味噌の格上格下説」など、諸説あるようです。

食のマナーは、食文化の変遷とともに移り変わりながら作られていくものなので、絶対的な正解はありません。関東関西以外でも地域により、また家庭により、使っているマナーが違うこともあるでしょう。ただし、今回調べた限りでは、どの地域であれ「主食のご飯は一番前の左に配置」はほぼ同じでした。(約7%ですが、左手前には汁物を置くという回答もありました。)これは食べやすさにも関係するでしょうが、古代中国から日本に伝わった「左上位」思想で、左を優位とする考え方に根づいているようです。お米は主食でありご飯椀は最上位に置くというこの考えは、平安時代から既に始まっていたそうで、日本人にとってお米とは特別なものであるとの思いを新たにしました。

和食チェーン店での標準的な配置

全国展開のお店は、どうしてる?

最後に、関東と関西でご飯の配膳位置が違う傾向があることは分かりましたが、全国展開の居酒屋や和食チェーンではどうしているのでしょうか?こちらは「統一マニュアルで配膳しているため、地域によって変更はしない」のが一般的回答です。したがって、定食などは標準である「ご飯の右手前に汁物」で出されています。

【まとめ】

ご飯の配膳の仕方は、関東と関西では違っている傾向があります。和食のマナーとしての標準は、ご飯を左手前に置き、ご飯の右手前にお味噌汁などの汁物、おかずはまとめて奥に置き、左から副菜・副副菜・主菜の順番で並べます。しかし関西では、ご飯の位置は同じもののご飯の右手前にメインのおかずである主菜を置き、汁物はご飯の後ろになる左奥に配置する人も多くいることがわかりました。ご飯の配置などの和食マナーは、右利きを正とした武家文化や、合理的な配置を取り入れた商人文化の影響など諸説があります。食文化が時代により変わるように、食のマナーもまた変わっていくものだと分かりました。