食糧備蓄の新しい考え方「ローリングストック」を解説
東日本大震災の時、関東近辺でもコンビニやスーパーの食品の棚はカラになりました。食料品は広い範囲で不足するのです。
そこで備えとしておすすめしたいのが、普段食べている食品を備蓄にも使う「ローリングストック」という考え方。備蓄分も考えて多めに買い置きし、食べた分だけ買い足すのです。官公庁や様々な企業も薦める方法で、多くのメリットがあります。
まず、簡単で誰にでもできます。お米、レトルトカレー、カップ麺、缶詰などを買い置きしておくだけ。非常食を買っても数年で賞味期限が切れてしまいますが、普段食べる食糧を少し多めに買い置きし、古い順に使っていけば、イザという時に「これ、古くて食べられないよ」とはなりません。
また、特別にお金をかける必要もありません。準備するものは「普段食べるもの」だから……家計が苦しい時はストックでしのげます!
備蓄すべきお米は何㎏?
災害を想定して備えるべき食品の量は「1週間分」と言われています。農林水産省はホームページでも「災害支援物資が3日以上到着しないことや、物流機能の停止によって、1週間は小売店で食品が手に入らないことが想定されます」と告知しています。
この「1週間分」をお米の量に換算すると、大人1人あたり「2㎏」。1日3食、1食あたりお茶碗一膳で計算しているので、もっと食べたい方は少し多めに準備しておきましょう。もちろん、家族がいる方は人数分用意してくださいね。
と同時に大切なのは「水」です。ちなみに飲み水は1週間で1人15~20リットル必要と言われています。もっと具体的に言えば、2リットルのペットボトル8本入りのケースが、1人あたり1ケース必要となります。
これに加え、お米を炊くためのお水を用意して下さい。2kgのお米を炊くために必要なお米は、余裕をもって3リットル。1人あたりペットボトル2本分多めに準備しておけば充分でしょう。
もちろん、「パックご飯」も備蓄に向いています。災害時、水は貴重品です。その点、パックご飯はお湯で温めても食べられるので、貴重な水を使い回せます。しかも食器が必要ありません。パックご飯を用意する時は、1週間分なら1人20パック程度用意してください。
“普段のお米”には「落ち着く」効果も
なぜお米にこだわるのでしょう。それは数多くの専門家が「災害時こそ普段食べているものが望ましい」と言っているからです。農水省によれば「食べ慣れている食品のほうが災害時のストレス緩和や体調維持に有益」とのこと。たしかに、食糧がなくて困っている時にほかほかのご飯が出てきたら……何より自分と家族の気持ちも和らぐはずです。
だからこそ、おかずは「自分や家族が好きなもの」を買って下さい。レトルト食品、缶詰などになると思いますが、同じものばかりを買わず、カレー、麻婆豆腐、魚の蒲焼きなど、食べたくなるものを揃えて下さいね。
これに加え、忘れてはならないのは「カセットボンベ」。ご飯を炊き、レトルトを温めるだけでなく、冬場は暖をとることもできます。数量は家族1人あたり3本程度。1本でご飯3合を8回ほど炊け、少し暖もとれる量です。
必要な備えは「モノ」だけじゃない
ほかにも、災害時には困ることがたくさんあります。例えばトイレや、お掃除に必要なものです。トイレットペーパーや、災害で割れたものをまとめるビニール袋も「ローリングストック」しておくとよいでしょう。
そして最も困るのが「充電」。スマートフォンは、アプリ「radiko」を使えばラジオも聴けますし、懐中電灯の代わりにもなります。充電器も多めに買い、あらかじめ充電しておけば安心です」。
そして何より大切なことは「家族との取り決め」です。
東日本大震災の時は「津波が来るから」と家族を迎えに行き、命を亡くされた方もいらっしゃいます。本当に残念なことです。一方、岩手県には「津波てんでんこ」という言葉があります。これは「津波が来たらてんでばらばらでもいいから、まずは自分の命を守りましょう」という合い言葉。家族と自分の命を守るため、ぜひこの合い言葉を家族に伝えておいてください。
また、落ち着いた後の集合場所も忘れず決めておいてくださいね。電話やメールも、災害直後は通じないことのほうが多いようです。
日本は世界有数の「災害大国」。ぜひ先人の知恵に学び、一緒に「減災」していきましょう。