東洋ライスってどんな会社?
和歌山県を本拠に、お米のなかから石粒を取り除く「石抜き機」という機械のメーカーとしてスタートした企業です。現在は、独自技術によって加工したお米『金芽ロウカット玄米』や『金芽米』も販売しています。精米の方法を見直し、玄米の栄養分がついていて、かつ白米のように食べやすいお米です。
雜賀慶二社長ってどんな人?
精米機器を進化させ続けた発明家です。「お米は研いでから炊くもの」という常識を覆した「無洗米」、なかでも糠(ぬか)で糠をとることにより環境を汚さない『BG無洗米』は、雜賀社長が世界で初めて実現したもの。その後、雜賀氏は「精米の方法が日本人の健康に大きな変化を与えてきたことに気付き、精米する時に栄養豊富な部分を残した『金芽米』も発明。ちなみにこめペディアは、雜賀社長に依頼し、論文を特別寄稿として掲載しています。
『玄米エッセンス(仮称)』って何?
東洋ライスの発表によれば“当社が培ってきた「玄米の要部を残す・抽出する」技術を応用し、栄養とうま味の宝庫の部分を抽出して粉体にしたもの”だそうです。
ただし記者発表の時、私はここに疑問を持ち、雜賀社長に質問しました。『金芽米』は、精米する時、栄養豊富でお米の香りも高い「亜糊粉層」を残します。もし「栄養とうま味の宝庫の部分を抽出」してしまったら、玄米エッセンスはつくることができても、栄養が少ないお米が残ってしまうのではないでしょうか。
しかし、雜賀社長いわく、それは誤解でした。
「この『玄米エッセンス』は、亜糊粉層だけではなく、それに隣接した糠の一部や、胚芽を支えている部分から栄養とうま味を分離したものです。だから、一粒のお米から『玄米エッセンス』をつくり、同時に金芽米をつくることもできます」
他にも質問しました。同社には、玄米の最も栄養に富む部分を粉末化した『金芽米エキス』という商品があります(詳細はリンク先を参照)。これとはどこが異なるのでしょう?
※「金芽米エキス」詳細
https://www.toyo-rice.jp/labo/extracts/
「『金芽米エキス』は、全国から良質な玄米を選定し『酵素測定器』で酵素が豊富に含まれている玄米だけを選別しています。その上で米1粒にわずか1%しかない希少な栄養源だけを抽出するのです。これだと大量には生産できませんし価格も高くなります。一方『玄米エッセンス』は、玄米は問わないため、価格を抑えられるし、用意できる量も豊富です」
どう食べるの?
東洋ライスは、これを小麦製品などに入れることを想定しているようです。栄養価の向上を実証する時も「パンの原料となる小麦に約5%入れることで実証」しています。
またニュースリリースにも「そばのつなぎに使っていた小麦粉を玄米エッセンスに変えることにより、ノングルテンのそばに」できるほか、「ハンバーガーショップでは、バンズだけでなく“つなぎ”としてハンバーグにも入れることで、“ヘルシーハンバーガー”も可能に」なる、といった内容を記載されています。玄米エッセンスを加えた「コシヒカリうどん」「コシヒカリ蕎麦」「コシヒカリパスタ」「コシヒカリラーメン」がつくれる、という記述も見られます。
現実的には、何に合うかがこれからわかってくるのでしょう。筆者が記者会見で「どんな企業と組んでみたいですか?」と質問すると「相手を選ぶものではありません。様々な食品に使えるはず」といった意味の答えがありました。
栄養は?
上の図は、小麦の食パン100g(A)、全粒粉の食パン100g(B)、小麦粉の約5%を玄米エッセンスに置換した食パン100g(C)の栄養を比較したものです。いずれも(C)が圧倒的に高い数値になっています。
『玄米エッセンス』の“濃度”も調整可能で、何に混ぜるかによって調合が可能、とのことでした。簡単に言えば、小麦粉でできているラーメンやパンに「玄米エッセンス」を混ぜれば、玄米由来の栄養をとることができる、ということです。おせんべい、お餅、おそばに練り込んでもいいはず。
今まで筆者は玄米中心に食べてきました。だからこそ、外でラーメンやパンを食べると、ちょっと「今日の食事はヘルシーじゃなかったな」と感じたもの。玄米エッセンスにより、ラーメンやパンもヘルシーに変わってくれたら大いに助かります。
味は?
記者に配られた『玄米エッセンス』をなめてみると……。
一番近い味は「きなこ」だと感じました。口に入れると香ばしさが立ち上がって、舌に乗るうちに甘みが引き立ってきます。ニュースリリースにも「パンを焼く時に『玄米エッセンス』を混ぜると甘くなる」とありました。
従来、食品にビタミン剤など栄養価がアップする添加物を加えると苦みやえぐみが生じるなど味に悪影響がでたものです。しかし逆に『玄米エッセンス』は、小麦や米に合う自然由来の甘みを感じます。
いつ発売するの?
その後、他社の女性の記者さんがこの気になる質問をしてくれました。雜賀社長がこう答えました。
「まだ名前にも『仮称』とつくくらいなので未定ですが、パッケージをつくって名前をつけて……と急げば数カ月で販売できるはずです」
『こめペディア』では、今後、この『玄米エッセンス(仮称)』と、その発売のきっかけになった『金芽米エキス』について、雜賀社長にインタビューを行う予定です。
(取材/文・夏目幸明)