【特別寄稿】 その3―コメの栄養素は『胚芽』にあるとの誤解



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一般的にコメの栄養は『胚芽』にあると思われているようだが、それは間違いだは言わないが、もっと『コメ』と言うものを知って欲しいと言いたい。コメの胚芽にはビタミンEと言う栄養素がある。それは親の稲にとって大切な我が子である『胚』が酸化したり劣化しないように、それを防ぐビタミンEを胚を保護している胚芽に詰めているからである。

一方、世の中には一般的に『胚芽』といわれているものを稲の子に当たるものと誤解している人が多いが、稲の子に当たる『胚』は胚芽の中の硬くてとっても小さな角だった形状のものであって、それを取り巻き保護している黄茶色の柔らかいスポンジ状のものが、一般的に言われている『胚芽』なのである。

従ってその胚芽の中には、胚や幼芽や幼根とかがあって、最も胚乳(白米の部分)に食い込んでいる胚芽の大半を占めている胚芽の基底部が『胚盤』というもので、ここが最もビタミンEが豊富なところであり、それによって『胚』を護っているのである。

そうなると、『人間の健康に役立つコメの栄養素は胚芽である』というのは、正解であって、誤解じゃ無いじゃないかとお叱りを受けるだろう。しかし私が言いたいのは、確かに胚芽にはビタミンEが豊富にあるが、コメを全体的に見た場合の栄養素は、胚芽の栄養素なんて僅かなものであって、それ以外の部分に、とてつもなく人間の健康に役立つ栄養素の宝庫があると言うことを知って欲しいのである。

実は昔から病弱であった私は、少しでも健康になりたくて、胚芽米や特別に胚芽だけを集めて食べてみたりしたが、特に何の変化も起きなかったが、後年になってコメの栄養素の宝庫が別のところにあること知ったのである。

ではその栄養素の宝庫はコメのどこにあるのかと言うと、米粒の全表面を覆っている糠層なのである。それも胚乳に接している深層の『亜糊粉層』という、人間の服装に例えると肌着の部分が特に多いのである。

亜糊粉層の特徴(写真は東洋ライス提供)

そして注目すべきはその亜糊粉層には『酵素』が特に多く含まれていて、炊飯時の浸漬などで米粒が充分吸水すると、その『酵素』の触媒作用によって、胚乳の澱粉や蛋白質などを科学変化させ、オリゴ糖などの多種多様の栄養成分を生み出すのであるから、これが米粒の最大の栄養素の宝庫となるのである。だから胚芽の栄養素なんて僅かだというのである。しかしここで特に留意して欲しいのは、『酵素』がそのような重要な働きをしていることと、更にその酵素は胚乳(白米の部分)には殆ど含まれていないという事である。

従って人間の手によって亜糊粉層も取り去られてしまった白米には、肝心の『酵素』がほとんど無いので、胚乳からオリゴ糖などの栄養成分を生み出すことがほとんど出来ないから、白米には胚芽もなければ、オリゴ糖などの栄養素の宝庫もないという『粕』であることを知って欲しいのである。

 

「目からウロコ 『コメ』って こんなに誤解されていたんだ!」――その4に続きます

 

<文>

東洋ライス株式会社 代表取締役社長

東京農業大学客員教授

雜賀慶二さん