「おねば」とは? お米を輝かせる“ご飯のうまみ”の謎

ご飯を炊く時に出る、白くてねばっとした汁、「おねば」。お釜の端からブクブク吹きこぼれそうになったり、炊飯器の吹き出し口にパリパリとした膜になって残っているものです。これらは使用後に洗わなくてはならず、一見、面倒なものに思えますが……実はご飯をおいしく炊きあげる上で、この「おねば」が重要な役割を果たしているのです。


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おねばの正体とは?

ズバリ「おねば」は、お米のでんぷんがご飯を炊く時の水に染み出たうまみ成分です。炊きあがったご飯の表面をねっとりと覆い、甘く、おいしくしてくれます。


炊きたてのお米の周囲を覆う、ツヤッとした層が「おねば」

ではなぜ、おねばはご飯をおいしくしてくれるのでしょう? おねばの成分であるでんぷんと糖の関係から理由をご説明します。

でんぷんは、漢字で書くと「澱粉」。語源は「水に沈む粉=沈殿する粉だから“澱粉”」との説が有力です。そしてでんぷんは、糖が1万~100万ほど集まってできています。

ご飯は噛むうちに甘くなってきますよね。これは、ご飯のでんぷんが分解され、糖になっているからなんです。

ではなぜ、噛むと分解されるのでしょうか?

私たちの唾液にはアミラーゼという消化酵素が含まれています。そして、この消化酵素によってでんぷんはその繋がりがほどけるようにして糖へと分解されていくのです。

では、おねばはというと……。

おねばは、炊飯時にお米のでんぷんが水に溶け出したものです。これがご飯の表面を、ねっとり、つやっと覆います。そしてお米を覆うおねばの層は薄いので、口の中で溶けやすく、おねばのでんぷんはすぐ糖に分解されます。

そう、ご飯を口に含んだ時、甘い風味がふわっと口に広がるのは、おねばが分解されて糖に変わっているからなのです。ちなみにおねばが少ないご飯は、パサッとして、しばらく噛むうちにようやく甘くなってきます。

では、どうすればおねばたっぷりのおいしいご飯が炊けるのでしょうか?

お米の研ぎ方で「おねば」たっぷりご飯に!

最初のポイントはこちらです!

「炊飯釜に水を張って、サッと洗い、水はすぐ捨てる」

お米の上から水を注ぐ人も多いと思いますが、これはNG。乾燥したお米は水を吸収しやすく、すすいで水を捨てるまでに長時間かかると、お米が小さな不純物やぬかを含んだ水を吸収してしまいます。

だから、お米はパッと洗って、水はサッと捨てることが大切なんです。余分なものを吸収させないために、あらかじめ炊飯釜やボウルに水をはって、そこにお米をつけましょう。

そして、5回ほど混ぜたら、すぐにその水を捨てます。次に、こうしてみてください。

「水が無い状態のまま、指先で「シャッシャッ」と10回ほど研ぐ」

「その後、水を入れて簡単にかきまぜ、水を捨てる」

重要なことなのでもう一度言わせてください! いったんお米をすすいでお水を捨てたら、
お水がない状態で、手のひらを使わず指先で「シャシャシャッ!」と10回ほど研ぎます。
その後、水を入れてかきまぜ、水を捨てます。これが2~3回で充分です!

大切なのは「お米を研ぎすぎないこと」なんです。

ご説明した作業は、お米の状態にもよりますが2~3回で大丈夫。精米の技術は向上しており、お米をしっかり研ぐ必要はありません。

では逆に、お米を研ぎすぎるとどうなるのでしょうか?

お米の表層が崩れるなどし、炊飯時に発生する「おねばの質」が落ちてしまうのです!

お米は洗っても洗っても水が白く濁りますが、これを気にする必要はありません。お米の表面についたぬか「肌ぬか」だけを軽く洗い流せば、それ以上洗う必要はないのです。逆に、水が白く濁るからと、炊飯時におねばになるお米のでんぷんを洗い流してしまうと、せっかくのご飯がパサッとしてしまいます。

お米の正しい研ぎ方の手順は以上です。大切なのは「まだ水が白く濁るから」とお米を研ぎすぎないこと。上記のようにお米を炊くと、おねばのうまみを感じられるおいしいご飯ができますよ!

【まとめ】

こめペディア編集長の私は、以前、大阪の「銀シャリ屋 ゲコ亭」というお店を訪ねたことがあります。そこには「米炊き仙人」と呼ばれるレジェンドがいて、彼は忙しそうに、いくつもの釜の火加減を微妙に調整していました。

「何をやっているんですか?」と聞くと、本当に仙人のような白い髭を動かし「おねばが吹きこぼれないようにしてるんだ」と教えてくれました。ご飯の表面をしっとりねっとり覆うおねばは、レジェンドにとってもそれくらい大切なものなのだと実感! 皆さんもぜひ、お米をどれくらい研げば自分の好みに炊きあがるか研究してみて下さい。