どれだけ待っても浸漬できないお水が!?
「お米の浸漬(お水に浸けること)は2時間以上」――前回の記事【炊飯とお水】“とびきりご飯”を炊く秘訣は「お水&時間」で、衝撃的な内容を伺いました。
しかも、この話には続きがあったのです。
炊き込みご飯をつくる時、浸漬の時から醤油やダシを入れてしまう方、いらっしゃいませんか? そのほうが味が染みこみそうな気がしますが、これは間違いなのだとか。
「お水に調味料を混ぜた状態で浸漬してはいけません。塩分などがお米の吸水をさまたげてしまい、浸漬せず炊いたような状態になってしまうのです。炊き込みご飯をつくる時は、必ず真水で浸漬を終えたあとで調味料を加えて下さい」
ナメクジに塩をかけると、干からびて死んでしまいます。かわいそう……なのはもちろんですが、これ、ナメクジさんの水分が塩に吸い取られてしまうからです。また、梅の実にフォークなどで穴をあけて砂糖に漬けておくと梅ジュースができます。これも、砂糖が梅の水分を吸い取るからです。
それと同様に、塩や砂糖がとけこんだお水は水分を吸い取ってしまうのです! だから浸漬に使う水に塩分などが混ざっていると、水分を吸い取るまではしなくても、水分がお米の内部に染みこみにくくなります。
実験も見せてくれました。
お皿にお米を撒きました。ここまでは普通に「パラパラパラ」といった感じ。
皆さんから見て左の皿には塩を溶かしたお水を、右の皿には真水を入れます。
それぞれお水を入れた直後はお米が半透明、いつもの光景です。ところが!
しっかり浸漬すると、お米に明らかな違いが現れました! クローズアップ!
右のお米はしっかりお水を吸っていますが、左はまだまだ。意外と知られていない事実で「実は外食産業でも誤解され、パサパサの炊き込みご飯が出てくることがありますよ」とのことでした。
水にこだわるなら“軟水”を
この話には、さらに続きがありました。ミネラルウォーターファンの方、要注意です!
「ご飯を炊く時にペットボトル入りのおいしいお水を使う方がいらっしゃいますが、この際に“硬水”を使ってはいけません。逆にご飯がおいしくなくなります」
お水には、主にカルシウムイオンとマグネシウムイオンが含まれています。そして、お水1リットル中に溶けているカルシウムとマグネシウムの量を表わした数値を「硬度」といいます。WHOの基準では、硬度が60ミリグラム/リットル未満なら「軟水」、60ミリグラム以上~120ミリグラム未満なら「中程度の軟水」、120以上~180未満なら「硬水」、180以上なら「非常な硬水」と呼びます。
軟水は口当たりが軽く、硬水はしっかりとした“お水の味”が感じられるため、どちらも飲むならおいしいのですが――そう、先ほどお話ししたとおり、様々な物質が溶け込んだお水は、お米にしみこみにくいのです。ちなみに、日本のお水の多くは「軟水」で、ヨーロッパや北米のお水は硬度が高め。しかも「硬水でご飯を炊くと、含まれている成分の関係でお米が黄色っぽく炊きあがることがあります」というお話も。ご注意あれ!
では、ペットボトル入りのお水の中でも、海外でなく、日本産のお水を使えばおいしいお米が炊ける、ということでしょうか?
「はい、ただしその場合は、お米を研ぐ時から使って下さい。お米はすぐにお水を吸うため、お米を研ぐ時に水道水を使うと、結局、水道水を含むご飯になってしまうのです。ただし、日本の水道水は、世界でもまれなほど上質でおいしいと言われています。実際に水道水とペットボトルのお水で炊き比べ、食べ比べる実験も行ったことがありますが、どちらがおいしいとはっきり言い当てられる人はいませんでした。そこまで神経質になる必要はないと思います」
勉強になりました!
【まとめ】
浸漬時間はご飯の味に大きな影響を及ぼします。昔はお米の品質がバラバラで、水分量にも違いがあったため、新米を炊く場合はお水を少なめにすることが一般的で、炊飯器にも「新米ならお水はここまで」という目盛りがついていることがありました。皆さんも、自分の生活パターンや好みに合った浸漬時間を研究されてみてはいかが!?